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イギリス人ということなのにYonatanという名前には違和感があったが、もともとテルアビブ生まれのユダヤ人(33)だった。何となくYonatanという名前がJonathanと関係がありそうな気がしていて聞いてみたら、やはりJonathanのヘブライ語読みだったので、名前を思い出す手がかりになり助かった。テルアビブの高校を出て3年軍務に服したあとでロンドンに渡り、ロンドン大学で土木工学を専攻し、ロンドンの地下鉄の増設に関わっている技術者。近いうちにテルアビブに戻って目下建設が予定されている地下鉄の建設に携わるつもりだという。この件は急な話だったので、メイルで打ち合わせている暇がなく、前日の夜ホテルに電話して、築地魚市場へ行きたいということで、とりあえず早めの830に新宿三丁目近くの質素なビズネスホテルのロビーで会うことになっていた。Applicationには希望としてTemples and historic placesとだけ書かれていたが、魚市場へ行くというとワクワクした様子になった。猛暑で熱中症が懸念される暑さの中、テルアビブを同じ暑さで全く違和感がないと言って、足取りも軽く、階段も2段ずつどんどん上がっていく。でも気を使うことも忘れず、マグロの大胆な包丁さばきにカメラを向けるときも「写真を撮ってもいいか?」といちいち聞く。以前案内したイスラエル人がコーシャー(Kosher)に忠実で、魚の形をしたもの以外は一切口にしなかった話をしても、彼はそんなこと一切構わないとのことで、タコ、イカ、ウニ、カニ、イクラなどにも強い関心を示す。ぜひ試食したいとのことで場外市場を歩き、空いている「すし一番」に入る。一番安い1800円のセットを1つ取り、私は味見程度で彼に味わわせ、もっぱら説明役。コハダの英語が出てこないので、iPhoneで検索して調べるが、出てきたgizzard shadという語は彼も知らない。イワシに近いのかなと言っていたらニシンに近い魚のようだ。でも他の魚を含めて「こんなうまい寿司は食べたことがない」という。

皇居参観をNetで申し込んで昨日参加したが、金曜日で東御苑は見られなかったとかで、未練があるようなので、銀座を抜けて皇居へ歩く。酷暑炎天の中、ウチワで涼を取りながら皇室談義。イギリスもそうだが皇室は長年に渡って国民を見守るという立場にある一方で政治家は短期間に国を統治するだけでクルクル変わる。だからたとえ象徴としてでも、長い視点を持つ人間が上にいることが意味があると彼は言う。ただ政治家が天皇を利用して国民を煽り、知らぬ間に戦争に突入して大惨事になった歴史があることも話題にする。それに懲りて軍隊を持たないことにした日本と対照的に、イスラエルでは徴兵制が徹底していて、以前話を聞いた18才での3(女性は2)の兵役のあとも45才になるまで毎年1か月は呼び出されて兵役を続けることが義務付られているそうだ。

御苑の休憩所で一服。彼は深酒もタバコもやらないがコカコーラ中毒だと自分で言う。自販機があるとつい買ってしまってガブガブやるようだ。自販機があると「敵がいるので要注意だよ」からかうが自分でも自制しようとしている様子。日本庭園のショウブはもう12輪しか残ってないがアジサイは見ごろ。一方、見事な枝が池の上に突き出たところの背景の岩の上から滝がしぶきをあげて落ちる日本庭園らしさを説明するとシャッターを何度も切る。

桔梗門から出て竹橋に向かう。皇居の周りをジョギングする人が多いのに彼もビックリ。以前外人とジョギングしながら英会話をするのに「通訳」をしてくれないかとSGGに依頼があったのを思い出す。そのまま地下鉄で原宿へ。

友引だったせいか明治神宮は結婚式ラッシュ。3組がほとんど同時進行。「写真撮っても大丈夫?」と気にしながらもパチパチ。「角隠し」の説明にはニヤニヤ。「外人もよくここで式を挙げるよ」というと「自分もあげたい」という。コスプレにも興味があるというので、竹下通りの「竹の子」でコスプレ衣装の中を歩く。写真が撮れないのが残念そう。もう2時近くになりランチというので、お好み焼きの「さくら亭」へ。週末なので待たされるのを覚悟で行ったが、どういうわけかガラガラ。酷暑の中で暑い鉄板に向かうのは賢明な人ならやらないのだろう。シーフードと豚に、サラミと卵の入ったボリュームのあるものを注文。自分で作りながら食べるというのも初めての経験と言って楽しんでいる様子。ドリンク付き90分食べ放題などというのもあるが、ここは一品料理の方がうまい。

例によって表参道のNespressoでタダのエスプレッソを試飲し、銀座線で上野へ。メロンの串刺しを食べながら、アメ横を散策後、不忍池へ。ハスが一面に大きな葉を広げ、大きなピンクの花がところどころにあるのに感動してカメラに収める。上野公園の一角で20人くらいのユカタ姿の人たちがラジカセの音楽に合わせながら盆踊りをしている。単純な動作だが、踊りながらの手拍子がきちんと合っているのに彼は感心。彼もこの旅でも自分のギターを持ってきているようで、かつてはお金に困ると街頭で帽子を広げてビートルズなどの自演をやり、当座の小銭を手に入れることもしてきたという。

浅草へ出て仲見世を歩く。甘い菓子がダメの彼は人形焼や雷オコシなどにはほとんど興味がない。でも初めて見る五重塔や野外の仏像、小さな社は興味の的。ロックの北方、両側に居酒屋の並ぶ広い通りでは土曜日の夕方とあって野外に即席の椅子席を作って満員の盛況。「普通の人の生活が見れてとても好きな場所だ」と彼は言う。日本酒も飲めるというので、我々も1軒に入ってトックリ1合ずつの冷や酒と枝豆で乾杯。枝豆も生まれて初めてだそうで、サヤも食べられるのかと聞いたりしながら指で不器用に豆を押し出す。彼によると、イギリスのパブは法規上11時閉店が義務付られていて、夜11時になると全ての店からお客が追い出されて、路上は酔っ払い天国になるという。酔った者同士のケンカ騒ぎがよく起って、それまでの静けさが破れて、突然大変な時間になるとか...24時間営業など考えられないとのこと。

良い気持ちになって再度地下鉄で新宿へ。明日箱根へ行きたいというので小田急の案内所で英文のパンフをもらい、翌々日には富士山へ行きたいというので西口のバスターミナルで富士五合目までの往復乗車券(5,200)を買う。更に都庁展望台も行きたいというので案内。もう8時を過ぎていて1, 2の旅行案内所は閉店。エレベーターを待つ人もほとんどなく、専用車のよう。イルミネーションに輝くビルや街並みを少し説明する。かなり遅くなったので、再度彼が新婚旅行で来日するときの再会を約してそこで別れる。

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以前ガイドしたオーストラリア人から、彼の姪とそのボーイフレンドをガイドしてくれないかとの個人的な依頼を受けた。メルボルン市内の薬局に勤める薬剤師のNatalie24)とその友人でメルボルン交通局に勤める技師Chris(32)だ。築地市場に行きたいというので、早めの830に新宿三丁目先のホテルで会う。メルボルとの時差は1時間しかないが、格安のAir Asiaでクアラルンプール乗り継ぎのため11時間かかって昨夜ホテルに着いたのは夜の1時半とのことで、やや疲れた様子。

大江戸線の新宿三丁目駅へ急ぐ。交通局の職員らしく何重もの階層構造の下を走る大江戸線に興味を示す。メルボルンの地下鉄も階層構造にしなければならなくなっていると言う。ラッシュアワーの混雑を避けるため逆回りに乗り、座席を確保。

魚市場では冷凍マグロを電動ノコギリで切る場面などの他に、どういうわけか昆布に魚卵をまぶしたものが興味の対象。朝食もほとんど取っていないというので、見学後は寿司を試食することになる。場内の「大和寿司」や「寿司大」などのLonely Planet掲載店の異常な行列を横目で見て説明しながら、待ち時間なしの場外へ。

わりに近い「すしざんまい別館」に入る。1,480円のセットを取って2人でシェアしたらどうかというとOK. 私は食べたくないので説明役。出てきたものを見てメルボルンだと同じものが2,500円はするね、とのこと。2人で仲良く1つのニギリを2つにして食べる。それでもマグロが口の中で溶けていくような感じが何とも言えないと言う。オーストラリアではこんな食感を味わうことはないとか。ただ、知らぬ間にサラダの小皿が置いてあり、彼らが払っているのを見てると1,580円位になっていたように思ったが、サラダも食べたし、面倒なので、ここではそのままにした。ここでも妙な付け出しの習慣がある。

一応満足して場外を歩いていると、黄緑色のやや大きめのカマボコ(?)があり、これは何だと聞く。小さな日本語の札を見ると「クジラ肉のカマボコ?」とか書かれている。国を挙げて捕鯨反対のオーストラリア人には説明し難かったが、説明し、自分の幼少時は肉といえばクジラしかなかったころの話を持ち出し、弁解した。でも逆にクジラもかなり出回っている証拠でもあると思う。

銀座を抜けて皇居へ向かう。途中コンセントのアダプターを買いたいという。オーストラリアのハの字の形の差し込みを日本のコンセントへつなぎたいとのこと。有楽町の「さくらや」で探す。日本人がオーストラリアで使うためのアダプターは沢山あるが、豪州人が日本で使うものは意外に少ない。でも何とか見つけて、丸の内を北へ向かっていると丸の内警察署の裏手の道端に報道陣のカメラの放列。VIPが来るのではと聞かれるので、報道陣の一人に聞くと、何かの容疑者が車で到着する予定とのこと。やがて黒いガラス窓のセダンが到着し放列が移動するのを2人は熱心に見ている。「オーストラリアから来てここに居るVIPを忘れるとは....!」と言いながら、二重橋へ。いまだに外国のVIPが宮内庁の用意する2頭か4頭立ての馬車で皇居に「挨拶まわり」にくる慣習も説明。

皇居前広場の緑一面に輝く芝生には「Keep Out」とあるがChrisは、「ちょっと足の裏で感触を確かめてみたい」という。低い柵を少し超えて足の裏で確かめ、そっと出て、外からハンカチで芝をそっと拭く。その情景をNatalieがカメラに収める。変わった神経の持ち主というべきか、オーストラリア人の芝生に対する愛着の表現というべきか。また皇居前の松林を見て、大きな盆栽のように、日本の松はどうして幹が大きくねじ曲がって背が低いのか...と聞く。彼らにはここで見る松が「日本の松」なのだ。

東御苑に入る。3人で写真を撮りたいというので、日本庭園に行く。周りにシャッターを切ってくれる人がいないので、私のiPhoneWiFi機能を利用してリモコンとして使い、近くのベンチの上に置いたデジカメの映像をiPhoneに写しだしながら、ズームの調整もリモコンで行って、シャッターも切る。そのまま目の前に持って操作するとiPhone自体も写真に写ってしまうので、Chrisがうまく後ろで隠しながらシャッターを切ってくれた。WiFiもいろいろ使える。

池の淵を歩く。色のない鯉はCarpだが、緋鯉などは文字通りKoi Fishという人が多い。「鯉」と「恋」の発音から、何となく「日本の若者は結婚しない」という話になり、平均結婚年齢は? というので「2930くらいだろう」というと「随分若く結婚するではないか...」とNatalie。 オーストラリアではもっと上だろうという。24才の彼女など当分結婚する気はないようだ。でも子供を作る「適齢期」はあるよ...と余計な老婆心。

本丸跡の城壁でChrisが城壁登りに挑戦。太めの身体をうまく動かして、つかみどころのない石壁で巨体をもち上げていく。石の間にコンクリートを一切使わずにきれいに組み上げられているのに感心。オーストラリアから来た忍者だ。

1時近くになり、何も食べてない私のことも心配してくれて、食事にしようという。お好み焼きが食べたいというので、原宿の「さくら亭」を思い出し、行ってみる。メルボルンのお好み焼きは小麦粉ばかりが多くて中身が貧弱とのこと。看板料理の「サクラ焼き」とキムチの入ったものを取って3人でシェア。私が作るのを見かねてChrisが交代。コテさばきも巧みでかなり年期も入っている感じ。Natalieもときどき加わりながら見事なチームワークで作り上げた。私もウェイターに顔を覚えられてしまって、帰りには「またお願いします」と声をかけられる。

表参道を説明しながら、原宿へ向かい、明治神宮に入る。よく聞かれることだが、途中「あんなに酒樽を積んで盗まれないか?」と言う。中身はカラかもしれないし、確かに神社では消費しきれないで「横流し」するというのを聞いたことがあることを言う。

このころからNatalieが足の痛みを訴える。背反拇指のようで、親指と小指の側面が飛び出してマメのように赤く腫れている。薬剤師でもある彼女は自分でもいろいろ持ってきてはいると言うのだが、靴はあまりゆるみがない。ここでガイドをやめてホテルに帰るか、続けるかを話し合う。結局明日からの関西旅行の資料と都内の英語詳細地図もほしいというので、都庁展望台に行ってついでに資料収集することにする。

展望台に上がり今日行ったところを上から復習。2階と1階で資料を収集して、東新宿のホテルへ戻るという段になって、Natalieは上野にも行きたいと言う。足もゆっくり歩けば何とかなるとのこと。そのまま都庁下から大江戸線で上野御徒町へ。地上に出てみると雨。アメ横で何軒か靴屋に入り、事情を説明して適当な靴を出してもらうが、彼女はなかなか満足しない。でもだんだん歩くことにも慣れてきたようなので、傘をさしながら不忍池から上野公園を歩いて説明。桜並木を歩いていて花見時の様子を説明していると、オーストラリアでは考えられないとのこと。酒は家庭か居酒屋、レストランなど以外では飲めず、公共の野外で酒を飲むことは違法で厳重に取り締まられるという。だからどうしても飲みたい人はビンを布や袋で覆って陰でこっそり飲むことになるので、道端で皆が堂々と酒で宴会とやるなど想像もつかないそうだ。

少し遅くなったので一緒に夕食をしたいというので、何が食べたい? というと「ラーメン」と来た。かつて入った上野駅近くのラーメン店で談笑しながら一緒に付き合って別れた。

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